工房日誌

Posted on 2014-01-28
切手の話vol.6 モナコのペロー童話

neko今回はモナコ公国発行の1978年の切手です。

ペロー童話と聞いても、グリムやアンデルセンに比べると、あまり馴染みがないかもしれませんが、17世紀にフランス人のシャルル・ペローによってまとめられたもので、「眠りの森の美女」や「赤ずきんちゃん」も出てくる古い童話集です。

写真はその中の「長靴をはいた猫」。有名な童話ですが、じつはどういう話なのか僕は知りませんでした。この切手、話の中身がわからないと楽しみが半減するんですね。幸い、青空文庫に収録されています。知らないという方はぜひご一読下さい。10分ぐらいで読めます。なかなか愉快な話です。

「猫吉親方」などという訳はなかなか味わいがありますね。お読み頂けたという前提で話を進めますが、改めて上の切手を見ると、真ん中にいるのは長靴をはいた猫吉親方。左手に持っている袋で、兎を罠に仕掛けている。画面右の池で溺れているのはカラバ侯爵。画面左のお城はたぶん人くい鬼の城でしょう。猫吉親方が右手で掴んでいるのもどうやらネズミに化けた鬼らしい。

と、童話の内容が1枚の切手にまとめられているのに驚くわけです。これはすごいですね。単にストーリーを詰め込んでいるだけでなく、快活で面白みのある物語の雰囲気も伝えている。デザイナーの見事な手腕です。ついでに言えば右上あたりにも何やら建物が。お話を読んだ方には何かおわかりでしょう。本当に芸が細かいです。

P1240156_DxOこのペロー童話の切手は9種組で、いずれも凹版多色印刷。凹版とは、金属板にじかに版を手彫りして原版を作る手法。非常に精緻な技が要求される印刷ですが、その多くは1色のみです(ニルスの切手を参照ください)。

ところが、モナコのこの切手は多色なんですね。「長靴をはいた猫」では4色使われています。右側の切手は「ロバの皮」という話で、落ち着いた渋い色調ながら、5色も使われています。実際の制作作業がどんなふうに進められているのかは僕もわかりませんが、凹版の場合、5色なら5つの版が必要ということは言えるでしょう。単色は1版で済みますから、はるかに手間もコストもかかるわけです。

P125170_DxO左は「青ひげ」。青ひげと呼ばれる金持ちの男は今まで何度も結婚しているのに、奥方はいずれも行方不明。その男と新たに結婚した女性が、ある日、開けてはいけないと言われた部屋の鍵を渡されて、という話です。

この切手は3色使われていますが、面白いのは青ひげの体全体を紺色で描きながら、髭の部分だけを明るいブルーで際立たせているところ。このあたりも非常に芸が細かいですね。右の奥方もどこか虚ろな表情で鍵を眺めていますが、いかにも開けちゃいけないと言われてるのに開けてしまいそうな雰囲気が漂っています。

モナコは元々フランスとの繋がりが強い国で、切手の製造もフランスで行われています。小国などは自前で印刷できる技術がなかったりしますから、他国や切手エージェントに依頼することがしばしばありますが、そういう中には自国の風土や文化と無縁な図柄も多く、「デザインも何もかも丸投げしてるのかしら」と疑問も持つような切手も少なくありません。

その点、モナコの場合は長い歴史を持った風光明媚な公国というイメージを裏切らない、きっちりとしたクライアント側のポリシーが感じられますね。芸の細かさ、印刷にかけられた手間と技術、けばけばしくないラグジュアリー感、贅沢とはこういうことかと唸らされます。

2014年1月28日(火)

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Posted on 2014-01-02
あけましておめでとうございます

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新年明けましておめでとうございます。旧年中は大勢の方にポール工房をご利用頂きました。厚くお礼申し上げます。本年もどうぞよろしくお願い致します。

上の写真は正月2日の児島湾ですね。岡山市民にはお馴染みの穏やかな内海で、僕の家から自転車でおよそ30分ぐらい。ちなみに向こうに見える山並みは島ではなく児島半島です。

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昔は僕も児島湾でよく釣りをしました。ハゼとかチヌ(クロダイ)、あと岡山名物ママカリなど。
この日も何人か竿を出している釣り人がいました。

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これは四つ手網の小屋。小屋の先に棒が出ていて、網を吊してます(写真では海中に沈んでますが)。
お客さんはこの小屋ごと借りて、網を引き上げて魚を捕ったり、イカを炙ったり、
お酒を飲んだりして過ごすわけですね。なかなか風情があります。

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児島湾に注いでいる百間川。内田百閒のペンネームの由来になった川です。
河原では凧揚げしている親子がいました。しかも、昔懐かしいゲイラカイト!

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そして百間川のほとりにある沖田神社に初詣。大勢の参拝客で賑わっています。

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おみくじは中吉でした。何事も運に任せて思い煩うな、とのご宣託。
わかりました、このポール、今年はもう何も思い悩みません!

こういうわけで、今年もポール工房日誌、とりとめのないことも綴ってまいりますが、
どうぞよろしくお付き合い頂ければと思います。

2014年1月2日(木)

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Posted on 2013-12-27
切手の話vol.5 オーストラリアの路面電車

PC270033_DxO久しぶりに切手の話です。1989年にオーストリアで発行された路面電車シリーズの中の1枚です。路面電車と言いつつ、左の切手では馬が引いています。馬車と鉄道の中間という感じでしょうか。

左上には筆記体による「Adelaide Horse Tram 1878」の文字。オーストラリア南部の都市アデレードで、1878年に走っていた馬車鉄道のようです。この馬車鉄道、調べてみるとかつては日本でも走っていました。ちょっとびっくりですね。

二頭の馬が軽快に駆けていく姿は実に清々しいです。そして馬車の車体がイエローなのも南半球にふさわしい明るさ。おまけに二階建てになっています。オーストラリアはこの当時、まだイギリスの植民地でしたが、ロンドンの有名なバスのように、どうもイギリスの人たちは乗り物を二階建てにする傾向があるのかもしれません。

PC270033_DxOここで僕の目を引いたのは二階部分の広告。19世紀にはすでに車体に広告を貼るという発想があったんですね。切手の場合、こういうときに架空の広告を入れることはないでしょう。おそらく実在したものではないかと思います。

早速調べてみたところ、左のCONTINENTALナントカはよくわかりませんでしたが、右の「MASON’S EXTRACT of HERBS」については、こんな画像を発見しました。ほぼ同じ会社の広告と考えていいでしょうね。

さらに調べてみるとこの会社、イギリスのノッティンガムの会社で「Extract of Herbs」という名前のボタニック・ビールを作っていたらしいです。ただ、ボタニック・ビールがどういうものなのか残念ながらよくわかりませんでした。ハーブのエキスを抽出しているらしいので、薬用酒のようなものだったのかもしれませんねえ。

PC270035_DxO思わず深入りしましたが、一枚の切手の中に思いの他たくさんの情報が詰まっていたりして、それを掘り出していくのも楽しみの一つであります。

このシリーズは5種類でワンセットになっていて、他の切手も美しいイラストが魅力的。車両だけでなく当時の風俗も一緒に描き込んでいるところがいいですね。そう言えば、左下の電車も二階建て。やはりイギリスの人たちは二階建ての乗り物が好きなのかもしれません。

2013年12月27日(金)

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Posted on 2013-12-22
ネームタグ増刷

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一昨年に作ったネームタグが、気がつくと残りわずかになっていたので、新たに発注しました。写真は、その届いたばかりのネーム。ボリュームたっぷりで、これで在庫を気にすることなく、じゃんじゃん作れます。

ネームがなくなっていくのは感慨深いもので、例えばミシン糸やカシメなどは作るものによって使う量が違いますから、なくなっていく速度もまちまちですが、ネームはアイテム1個につき1つだけですから(1つのトートに2つのネームが付くことはありませんので)、「ああ、これだけの数を作ってきたんだな」と、つい、しみじみとしてしまうのです。

じつは次に発注するときには、デザインや印刷色を少し変えようかしらとも考えてもいたのですが、今の版がすっかり目に馴染んでしまったので、現状のままの仕様で印刷をお願いしました。印刷してくださったのは福井県の業者さん。版も保管していてくれたので(2年間は保管してくれます)、じつにスムーズに追加発注できました。

ともあれ、ネームがなくなっていくのも皆様のご愛顧の賜物です。厚くお礼申し上げます。そして、これからもどうぞよろしくお願い致します。

2013年12月22日(日)

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Posted on 2013-11-30
操山散策記

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このところ室内作業が続いて、すっかり運動不足だったので、久しぶりに自宅近くの操山(みさおやま)を歩いてみることにしました。

スクリーンショット 2013-11-30 22.18.27操山は岡山市内にあるごく低い山で、標高は169mですから、東京タワーの半分の高さほどしかありませんが、ハイキングコースなどが整備されていて、岡山市民には親しまれている里山です。

ということで、今回はこの操山の散策記です。あらかじめお断りしておきますけど、面白写真とかそういうのは出てきませんのでご了承ください。じつに淡々とした写真ばかりになります。

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すっかり紅葉が始まっている操山です。これは山の南側ですね。

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僕は操山のふもとで育ったので、子供の頃からよく山の中に入って遊んでいました。
近所のお兄さんに連れられて入ったりしたんですが、そのお兄さんから色々教わったものです。

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例えば、「道が二手に分かれていて、どちらに行くか迷ったら、太い方の道へ進め」というのも、その一つ。太い道は人がより多く通っているから迷子になる確率が低いと。僕などはつい細い道へ進みたくなる性分ですが。

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もうすぐ冬が来るというのに、シダは青々と茂っています。

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枝を張っている様子が毛細血管みたい。木の枝分かれはフィボナッチ数、つまり黄金比らしいですね。自然というのは偉いもんだと思います。

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木々にはこういう感じで、名札がついています。歩きながら木の勉強ができます。これは葉の形が蓑に似ているから、カクレミノと。

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ところどころ、見晴らしの良い場所があります。これは岡山市南部の眺めで、遠くには小豆島も見えます。おにぎりを用意しとけばよかったなと、ちょっと後悔。

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カーン、カーンという音がするので、何だろうと思ったらキツツキが木をつついている音でした。残念ながら、きれいに撮れている写真はないのですが、コゲラという種類です。キツツキを見たのは、生まれて初めてでした。

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落ち葉が重なっているところは、足下が滑りやすいので要注意。何度か「アワワ」とのけぞりました。

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花はほとんど咲いていなかったのですが、一箇所、椿の咲いているところがありました。

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栗が落ちているところも。一瞬、色めきましたが、実はほとんどなくなっていました。鳥たちについばまれたのでしょうか。

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こういう鬱蒼とした感じが好きなのです。

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そして苔の写真を撮ってみたり。

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枯れ葉の写真を撮るのも好きなのです。

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ふもとが近付いてきました(実はここからが急な下り坂で大変だったのですが)。

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フィニッシュは安住院というお寺さん。こちらは内田百閒の墓所があるみたいですね。山門の形がかなり変わっています(一瞬、どこへ降りてしまったのかと思いました)。

人が写っている写真はひとつもありませんでしたが、じつはこの日も結構な数のハイキング客で賑わっていました。山道で見知らぬ人と交わす「こんにちは」という挨拶もなかなかよいものです。次に登るのは来年の春。ウグイスの初音が聞こえる頃でしょうか。

2013年11月30日(土)

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