帆布の話

ポール工房で使っている生地は倉敷産の帆布ですが、写真はその倉敷のメーカーさんから取り寄せた11号帆布の生地サンプル。小物などに使われることの多い11号は色数も豊富で、全部で20色あります。このサンプルはなかなか使い勝手が良くて、配色を考えるときには一日中いじったりしています。

じつはトートを作り始めるまで、倉敷が帆布の一大産地だということを知りませんでした。勉強不足も甚だしいのですが、色数が豊富で尚かつ上質な帆布を作っているメーカーさんはないだろうかと調べているうちに、僕の住んでいる岡山市の隣町・倉敷市で、古くから帆布生産を行っていることを知ったのです。まさに灯台もと暗し。

倉敷はデニムも含めて、江戸時代から綿織物がさかんな土地です。その経緯を話し出すと長くなるのでまた別の機会にしますが、古くから続いてきた綿織物のノウハウが残っていて、それが帆布の生産にも活かされているというわけです(勉強不足を反省してかなり調べました)。

このメーカーさんは複数の原糸を一本にしていく「合糸」という工程から手がけています。何本合わせるかで帆布の厚みと号数が決まるのですね。そこから撚りをかけて強くする「撚糸」、タテ糸になる糸を整えてロールに巻いていく「整経」と進み、実際に織り上げていく「製織」を経た後に検反作業と仕上げを行うわけですが、その各工程で熟練した職人さんの目がしっかりと光っています。

例えば整経という巻き取りの工程では、季節や天候によって変わりやすい糸のコンディションを見るために、職人さんが糸に手を添えて確かめるということです。僕も実際にミシンで縫っていてわかるのですが、糸というのは実にその日の湿度の影響を受けやすいもので、乾燥した日と湿度の多い日で設定の微調整が必要になってくるんです。

そうやって作られた生地は、職人さんの目と手を注がれたものならではの丁寧さが感じられます。何と言っても、まず手触りが良いということ。それから生地の目が詰んでいて風合いのある質感を持っていること。これはやはり一本一本の糸が均等になるように、職人さんによって注意深く織られているからだろうと思います。そのような人の目と手をきちんと経てきたモノは、どこか清々しく晴れがましい顔をしている気がします。

この生地、僕の家から倉敷のメーカーさんまで車で4、50分の距離ですので、直接買いに行きます(たまに宅配便で送ってもらうこともあります)。県道児島線という道を車で走っていくのですが、これは昔の金比羅往来という四国の金比羅さんに渡る人たちが通っていた街道が原型になっていて、今でも瀬戸大橋を渡る車が往き来しています。

休憩するほどの距離ではないものの、時間があれば途中のドライブ・インに立ち寄ります。右の写真はそのドライブインのエビフライと牡蠣フライの定食。帆布とまったく関係のない写真で恐縮ですが、じつはこの店に立ち寄るのが僕の密かな楽しみです。今の季節ならアイスコーヒーを飲みながら、四国に向かう車の流れを窓からしばし眺める。そうして往時の金比羅往来に思いをはせ、あたかも街道の茶屋にタイムスリップしたような気分を味わっているのです。

2013年6月4日 火曜日


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