トップページ > 工房日誌 > 切手の話 vol.2 スウェーデンのニルス

切手の話 vol.2 スウェーデンのニルス

すっかり暑くなってきました。こういうときには、涼しげなものを鑑賞するに限ります。というわけで、2回目になる切手の話、今回は北欧スウェーデンの「ニルスのふしぎな旅」です。

この「ニルスのふしぎな旅」は、ニルスという少年がある日、魔法をかけられて体が小さくなり、ガチョウの背中に乗って旅をするという物語で、スウェーデンのノーベル文学賞作家セルマ・ラーゲルレーヴの書いた児童文学です。

ブルーと白の対比がとても美しい切手で、一見、単色で刷られているとは思えないほど。しかも、これは凹版切手です。

凹版切手とは金属板にビュランという彫刻刀で版を彫り、その彫り跡(凹部)にインクを載せて刷られたもの。例えば、この切手の大きさはおよそ3cm×2cmですが、彫られた版も3cm×2cmということです。つまり、凹版切手の場合、我々が目にしているのは印刷された絵柄であると同時に、極小の面積に彫られたビュランの跡でもあるんですね。

右の写真はルーペによる拡大図ですが、ニルスの顔の部分はたかだか2mm平方。これだけの面積の中で、ニルスの得意気でありながら、旅する者の一抹の孤独感までもがビュランで表現されていることに、僕は驚きます。この切手の彫版師はチェスラフ・スラニア。ポーランド生まれですが、スウェーデン郵政を中心に活躍した凹版切手界のスーパースターです。

改めて見ると、ガチョウは筋肉隆々でかなりマッチョですね。そしてブルーのインクは青空というより、どこか夜を思わせます。清々しい反面、全体的に淋しげな雰囲気があって、そのあたりも僕の好きなところ。ちなみに右下に書かれている「SVERIGE」はスウェーデン語による国名表記です。

これだけ猛暑が続くとですね、僕もガチョウの背中に乗って、どこか旅したいという気持ちもしないではないですが、これは小さな子供だからサマになるのであって、四十歳を越えたおじさんがガチョウの背中に乗っているのはいかがなものかと。そもそも僕は高所恐怖症なんですね。たぶん、そうなったら泣きながらガチョウの背中にしがみついていると思います。

2013年7月9日火曜日


Related Posts