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切手の話vol.4 シャーロック・ホームズ

PB06908_DxO切手の話ばかり書いていると、「ポール工房はいつから切手商になったのか」と言われそうですが、今回は1993年にイギリスで発行されたシャーロック・ホームズの切手です。

この切手は5種類1セットで発売されたもので、ホームズが登場する5篇の小説がそれぞれ描かれています。左写真は「ライギットの大地主」という小説のワンシーン。左の紳士がホームズ探偵、右がワトソン博士です。

ホームズが転地療養していた最中の事件、ということでおそらく療養中らしく彼の下半身に毛布が掛かっているのでしょう。バイオリンはふだんからホームズが趣味で弾いているもの。毛布やバイオリンの描写は小説には出てこないので、切手デザイナーによる脚色ですが、かなり芸が細かいです。

絵そのものにも挿画っぽいちょっと独特な雰囲気がありますね。線や影となる黒インクの部分はおそらく凹版印刷によるものだろうと思います。これは原版に彫版師がじかに版を彫っていく手法で、手彫りの跡がそのままインクになって現れます。

IMG_4022例えば、この場面は殺人事件の現場に残されていた手紙の切れ端をホームズが虫眼鏡が覗いているところですが、拡大すると右の写真になります。

手紙にもしっかり文字が書かれています。しかも、小説に出てくる「at quarter to twelve learn what maybe」という言葉まで再現。画像下の目盛りが1mm単位ですから、どれくらい小さな文字がおわかりでしょう。切手の彫版師はこの文字を原寸(!)で彫っているんですね。

このあたり、まさに彫版師の腕の見せ所かもしれませんが、この手紙の文字を刻みたいが故に、「ライギットの大地主」という小説が題材に選ばれたのではないか。そんな勘ぐりさえしたくなります。

PB069905_Dx左は同じシリーズの中から「バスカヴィル家の犬」。結末近くのクライマックスの場面です。ここまで画面が暗い切手も珍しいんじゃないでしょうか。それでいて、人物や犬が黒く潰れることなく、くっきりと描かれている。このあたりは印刷技師の腕の見せ所かもしれません。

右は「ホームズ最後の事件」で、ホームズがモリアーティ教授と対決して滝壺に落ちるという有名な場面です。ふたりの緊迫した姿もさることながら、岩肌にシダが生えているところとか、モリアーティの懐から懐中時計が飛び出しているところとか、このあたりも芸が細かいなあ、と感心します。

切手を作っている人たちが嬉々として取り組んでいる様が目に見えるようで、眺めていてじつに楽しい切手です。ちなみに左上に入っている金色の横顔はエリザベス女王の肖像。切手には国名を表記することが万国の間で取り決められていますが、イギリスは世界最初に切手を作った国ということもあり、国名の代わりに女王の横顔を入れているのです。

2013年11月7日 木曜日


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