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451特製ブックカバーができるまで

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岡山県玉野市にある本のセレクトショップ「451ブックス」さん、今回、このお店の特製ブックカバーを作らせて頂きました。裏面に手彫りのスタンプが押されている、かわいいブックカバーです(451ブックスさんのみでの販売になります)。

451ブックス(岡山県玉野市八浜町見石1607-5:地図

ポール工房のブックカバーをご覧になった451ブックスさんが「特製のブックカバーを作りたい」と言って下さったのがきっかけですが、今回その制作過程を公開したいと思います。以下、順を追って説明していきます。

まず、最初の打ち合わせで「配色はポール工房のブックカバーと同じでOK」ということ、それから「どこかに451という数字のスタンプを入れたい」というご要望を頂きました。

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ロゴの位置ですが、入れるとしたら表紙の右下あたりでしょうね。すでにポール工房のネームがあるので、数字が大きいとゴチャゴチャした感じになります。その点も考慮しながら判面サイズも決めました。上の写真のような感じです。

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ゴム判はこんな感じで僕が手彫りしています。文字を彫るのは難しいです。451の場合は曲線が少ないのでよかった。これが398だったら大変だったかもしれません。ちなみに店名は、レイ・ブラッドベリの小説「華氏451度」にちなんでいます。

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451ブックスさんのマークには本のシルエットが付いています。そのパターンもついでに作ってみました。ポール工房のネームと同居すると、ちょっとくどい感じ。同じ面に図柄が2つあるせいでしょうか。

2案作りましたが、シルエット付きのものはどう見てもくどいので僕の判断でボツにしました。数字バージョンの画像だけを店主さんにメールします。基本的にやりとりはメールでした。

さっそく店主さんから返信を頂きます。

ポール様
さっそくハンコを作っていただきありがとうございます。
頂いた画像の位置、サイズでもかまいませんが、
裏側の中央下付近は如何でしょう?

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写真にすると、こういう感じになりますね。たしかに裏面でもいいのです。むしろ裏面の方がいい。しかし1つ問題があります。

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裏側だと、収納する本の厚みによってロゴが移動するのです。位置が固定されないのはどうもよろしくないのでは、と思いました。その点を店主さんに伝えます。

裏の中央下という位置、僕もいいと思います。ただ、問題は文庫本の厚みによってセンターがずれてくる点ですね。厚さ7mmの本を基準にセンターを決めた場合、厚さ18mmでは左に1cmほど移動します。これが難です。

こういうメールを送りつつ、僕は「表紙にスタンプするのなら、もう少し判面を小さくした方がいいのかしら」と考えていました。どちらにしても裏面に入れることはないだろうと。しかし、次に来た店主さんからのメールに僕は衝撃を受けたのです。

こんにちは。
いろいろとありがとうございます。
後ろだと文字がずれる件。実はそれも楽しいかなと思っています。薄かったり、分厚かったりするとそれに合わせて位置が変わるのが、リアルなブックカバーな感じがしていいのではと。
手作りならでは感もでて、かえって喜んで貰えそうに思うのですが、いかがでしょう?

なんと! ずれるのが楽しいとは!
即座に面白いと思いました。僕にはなかった発想ですが、言われてみるとロゴが常に同じ位置になければいけない理由はありません。むしろ本を読んでいるという実感があります。何よりもこういう自由な考え方こそが451ブックスさんらしい。早速店主さんに返信します。

おお、なるほど、面白いですね! まったくそこに考えが至りませんでしたが、言われてみると、その方が面白いです。位置を固定しなきゃと考えていた僕は頭がカチコチになっていたかもしれません。

共同作業の醍醐味は、こんなふうに自分の中にはなかった視点に出会えることです。さて、裏に押すことが決まりましたが、ふとある考えが浮かびました。「あれが使えるんじゃないか」と。

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そう、いったんはボツにしたシルエット付きの451です。

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左右にずれた場合の画像。数字のみが移動するより、マークがずれた方が愛らしいですね。
再び画像をメールします。

本のシルエット付きのものを実は作っていました。表に押すとくどい感じだったので、ひそかにボツにしたのですが、裏に押すならこれも有りかなと思っています。数字のみの場合よりもスタンプに手作り感はありますが、わざと手作り感を出しているわけではなく、これがほぼ僕の限界です。

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これがその限界のハンコです。わざと手作り感を出すような高度な技はありません。
気に入って下さったらいいが、と思いつつ待っていたところに返信が届きました。


こんばんは〜。 いろいろとありがとうございます。 本のシルエットの手作り感がいいですね。 写真を添付してみました。 文字だけだと下が合うと思うのですが、本の形の場合は中央にあるほうがいいかなと思っています。 お手数をおかけいたしますが、どうぞよろしくお願いいたします。

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おお、確かに真ん中の方が決まります。このあたりに気が回らなかったのは僕の未熟! こういうご指摘はむしろありがたいものです。うん、これで決まりですね。

すっかり長くなりましたが、こうしてデザインが決定しました。つまるところ、「451のスタンプをどこに押すか」というだけの話なんですが、非常にスリリングかつ楽しいやりとりでした。大いに勉強にもなりました。

制作途中でじつは手彫りのスタンプではなく、ロゴデータを支給してもらって、業者さんに機械彫りしてもらおうかとも考えました(大した費用はかからないのです)。そちらの方がたしかにきちんとしたスタンプにはなります。でも結局やめました。

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451ブックスには、店主夫妻がひとつひとつセレクトした本が集まっています。新しい本、古い本、そして全国から集まった手作りのリトルプレス。そうやって作られたお店には、本好きのお客さんたちがやってきて、いつも親密で暖かい空気が流れています。それはちょうどレイ・ブラッドベリが描いた、本の好きな人たちの姿と同じです。

それであればやはりこのブックカバーに押すスタンプは、データから作られた機械彫りのハンコではなく、そのお店を知る人間が直に手彫りした方がいいのでは、と考えたのです。何よりも僕自身がこのお店が好きですから。

3月21日(金)より451ブックスさんで販売しています。どうぞお求め頂ければと思います。

2014年3月20日(木)


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