『アンダーカレント』(豊田徹也、講談社)

更新が滞ってすみません。よく見ると、本棚にあまり本がないんですね。こんなページを立ち上げなければいいのですが、そのうちに図書館から借りてきた本も紹介するかもしれません。それはさておき。

銭湯が好きで、さっきもちらっと入ってきました。つくづく銭湯の仕事は大変だろうなと思います。僕がいつも行っている銭湯は13時半から営業開始で、夜は24時まで。営業が終わって釜の火を落として、浴場の掃除をすると1時は過ぎるでしょう。寝るのは早くても2時ぐらいでしょうか。それで翌日の13時半から営業ということは、たぶん遅くても11時には釜に火を入れないと間に合わないはず。ほぼ一日中、お風呂のことを中心に回るわけです。

家族総出でなければ、とても体がもたない銭湯の仕事ですが、このマンガは銭湯を経営する女性「かなえ」が主人公で、夫の「悟」が失踪して途方に暮れているところから始まります。
夫が失踪した理由もわからないまま、しかたなく、かなえはおばさんと二人だけで銭湯の営業を再開します。ただ、おばさんが腰が悪いために、終業後の掃除もかなえひとり。人手が足りなくて困っていたところにやってきたのが、堀という男です。無口で愛想のない堀ですが、その働きぶりを見てかなえは徐々に信頼していきます。

このあたりは山田洋次監督の映画「遥かなる山の呼び声」にちょっと似ているんですね。この映画は、夫を亡くした倍賞千恵子がひとりで牧場を切り盛りしているところに、訳ありふうの高倉健が働かせてくれとやってくる話です。この映画も僕はとても好きで、最後は号泣します。号泣というか嗚咽に近いですね。

かなえは銭湯の仕事に忙殺されながらも夫・悟の行方が気になり、友人のつてを頼って探偵に捜索してもらうことになります。失踪人の捜索は大変難しいということで探偵も難渋するわけですが、調べていくうちに悟の意外な事実が明らかになって…というところで続きは本書を読んでみてください。
だいたい、このサイトは必ずしもオススメ本を紹介する目的ではないのです。本を肴にして、世間話でもしようかしらという感じで始めたのです。ただ、このマンガはいいです。なぜ、これが芥川賞や直木賞を取らないのかと思います。

マンガならではのコミカルなキャラクター・サブじいや、トリックスター的な探偵・山崎がいい味を出しています。ただ、やはり終始一貫して無表情な堀さんの魅力につきます。なぜ、作者が彼をこのような人物として描いたのか、それは最後まで読んでもらえればわかります。読み終わったとたん、それまでのページをすべて読み返して、堀さんの表情をじっくりと見つめたくなります。逆に言えば、読み返すことで初めて完読するマンガと言ってもいいでしょう。ちなみに僕は20回ぐらい読み返しました。

帯には「映画一本よりなお深い、至福の漫画体験を約束します」とありますが、いつわりはないでしょう。できれば、安易な映画化やドラマ化だけは避けて頂きたい。もしも、どうしても映画化するのであれば、若かりし頃の高倉健と倍賞千恵子でお願いしたい。となると、今回の副読本は、やはりビデオ学習ということで「遥かなる山の呼び声」のDVDをおすすめします。ハナ肇がいいのです。最初は嫌なやつで登場しますが、ぜひ最後まで付き合って頂きたい。
『遥かなる山の呼び声』DVD
監督:山田洋次
出演:高倉健、倍賞千恵子、ハナ肇、他

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