『derek jarman’s garden』
(デレク・ジャーマン、写真/ハワード・スーリー、訳/伊藤延司、光琳社出版)

このページは、自宅の本棚を整理していたら、ひょっこりと出てきた本を紹介していくので、基本的に新刊書はあまり登場しない予定だ。今回紹介する本も版元の光琳社が倒産したので邦訳版は絶版している(原書はまだ売られていると思う)。今から10年ほど前に買ったもので、デレク・ジャーマンのことも映画監督ということ以外に知らないし、彼の作品もまるで見ていなかったのだが、どこかの荒涼とした土地で庭作りをしているらしい男の生き方というものに興味を持ったのだ。

デレクの住まいがあったのは、イギリスのダンジェネスという、ドーバー海峡に近い海辺の土地。つねに強い潮風にさらされているこの場所は、彼の言葉によれば「世界の外の世界」であり、「世界最大の石ころ地帯」で、いわば、庭作りにとっては最悪の場所だ。

だから、その庭はガーデニング雑誌に出てくるような緑がむせ返っている華やかな世界ではない。生き物を拒むかのような石ころだらけの大地に、それでもしがみついて生きていこうとする、いわば「植物の執念」が全開になっている場所だ。
デレクはその場所を「パラダイス」と呼んだ。病と闘っていた彼にとって、おそらくここは世界で最も切実に生命が息づいている場所だったのだ。

たぶん、その庭は我々の知っている「美しい庭」とはかけ離れているだろう。しかし、近寄って一つ一つの花や草や見つめるとき(そして彼の愛した石ころや庭道具を見つめるとき)、そこ には濃厚な生命の瑞々しさがあふれている。植物を育てることが、じつは我々自身の生命を育むことだと気付かせてくれる。
ハーワード・スーリーの写真がすばらしい。

return top