カテゴリー ‘ 2006年の手紙

イルカとカラスを追い払い

親愛なるサムへ
イルカとカラスを追い払い、海亀を枕にして眠っている、という話だったな。
実はまだ眠っているんだよ、サム。目が覚めないんだ。眠りながら、この手紙を書いている。もう少し、眠っているかもしれない。いつ、起きるのかはわからない。多くの人が勘違いしているのとは逆に、我々は、眠っている間はいつ目覚めるのか、自分で決めることはできない。
朝、我々が目覚めるのは偶然の産物だ。ひとは毎朝、たまたま覚醒する。「偶然」という言葉が気に入らなければ、「契機」と言い換えてもいい。目覚めることができるのは、そのとき目を覚ます契機が訪れるからだ。それは自分の意志ではない。尿意にせよ、目覚まし時計にせよ、意志とは切り離されたものが契機なのだ。
自分の意志では抜け出すことのできない眠りの世界に向かって、我々は毎晩ダイブする。契機の訪れを信じて、深海に潜り込む。
朝は来るだろう。その夜明けの光景が気に入るものであろうとなかろうと、きっと朝は来るだろう。誰かが僕の肩を揺さぶるだろう。僕は目を覚まし、たぶん朝の光に眼をくらますのだ。
2006/7/31 Monday

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